武則天 #64 李忠の裏切り

 皇后に挨拶する劉氏と李忠。

劉氏は注がれたお茶に指輪に仕込んであった毒を入れ、飲み、皇后にわからぬよう指輪を外し李忠に渡した。

 事前の打ち合わせ通り李忠は指輪を地中に埋めた。

 劉氏は皇后と二人で会話している時、残りのお茶を一気に飲み干す。

そして劉氏は皇后を責め、にじり寄って行く、後ずさりする皇后。

皇后の腕を取りなおも責め立てる劉氏だったが、血を吐き始める。

そこへ媚娘と雉奴がやって来た。

劉氏は皇后に

「私を殺さないでください」

と言った後

「陛下、助けて下さい」

と雉奴に助けを求める。

「身に覚えのないことです」

と訴える皇后。

劉氏は息絶えた。

雉奴は皇后を捕らえるよう命じる。

「濡れ衣です」と叫ぶ皇后。

 駆け付けた大理寺の戴青は死因は毒物でお茶に毒が盛られていたと告げる。

皇后は濡れ衣だと雉奴にすがるが、雉奴は思いきり突き放す。

そこへ長孫無忌が現れる。

長孫無忌は皇后がお茶に毒を盛った所を雉奴が見ていないこと、また養子に出すことを承諾していなかったのに立政殿に来るのはおかしいと指摘し何か裏があるのではないかと言った。

 そして皇后を恨んでいた劉氏が重い病を患い不治の病であることを知り皇后を陥れたのではないかと推測する。

長孫無忌は自身の話に納得していない雉奴に李忠を呼んで話を聞くことを提案する。

 李忠は劉氏が重い病を患い完治していないこと、自分が立政殿に行くと不機嫌になっていたことを雉奴に話す。

そして母に指輪を埋めるよう言われ、言いつけ通り地中に埋めたことを打ち明ける。

思わぬ展開に動揺する媚娘。

 

 後日戴青から指輪の毒とお茶に入っていた毒が一致したこと、劉氏が余命いくばくもなかったことが雉奴に報告される。

それを聞いた雉奴は、劉氏に死について皇后は潔白であると結論付けた。

 

 媚娘は瑞安から李義府からの情報で雉奴が呉王追放を決めたことを知らされる。

 

 王仁祐は娘の窮地を救った長孫無忌に礼を述べる。

長孫無忌は劉氏の死を不審がっていたが、長孫中から劉氏が親密にしていたのは媚娘だけだと聞き、黒幕が媚娘であると確信する。

すぐさま雉奴に知らせようとする王氏を押しとどめ、まずは皇后の地位を固めるため李忠を皇太子にすることを奏上すると話し王氏も受け入れた。

 

 李忠が皇后の養子になったことで自らと素節の寵愛が失われていくとを心配する淑妃。

 

 呉王の立場を心配する楊青玄は雉奴が媚娘に入れ込んでいると批判し、いざとなったら雉奴は呉王の身を守りますかと問い詰めるが呉王は何も答えない。

そんな呉王に楊青玄は身を守る為には後ろ盾が必要だと進言する。

 「李勣将軍か」と問う呉王に

 「まさしく」と笑顔で頷く楊青玄。

そこへ王徳がやって来て陛下からの言付けで母を失った李忠を慰めるため入宮して欲しいと頼まれ呉王は承諾する。 

 

 劉氏との最後の争いが夢に出てうなされ起きる皇后は不安になり李忠の元へ行くと言い出す。

 その時、媚娘も李忠が心配で瑞安と共に会いに行こうとしていた。

 李忠の元を訪れた皇后を見て媚娘は行くのをやめ一人で散歩することにした。

 

 李忠は母親がいなくて怖くて眠れないと言い皇后に寄り添う。

皇后は李忠に悪人は媚娘だと教える。

 

 媚娘が一人で散歩に出かけたことを聞いた雉奴は、自ら探しに行く事に。

 

 承慶殿から明かりが漏れているのを見かけた媚娘が中を覗くとそこには剣を舞う呉王がいた。

その姿を見て先帝を思い出した媚娘はその思いのまま中へ入る。

そして呉王と媚娘二人が舞い、手を取り合い見つめ合う。

媚娘を探し承慶殿にたどり着いた雉奴はその姿を見てしまう。

その上、媚娘が

「目覚めたら何も知らぬ武如意に戻っていてほしい

 やり直せるなら宮中には身を置きませぬ」

と話す会話を聞いてしまい、たまらず雉奴はその場を去るのだった。

雉奴が立ち去った後、媚娘は宮中から離れない理由を

「雉奴がいます。

 この世で唯一の親族なのです」

と語る。

 呉王は媚娘に

「あなたは父上を深く愛していました

 そして今は‥。あなたが分からぬ」

と言葉をぶつける。

 

~我的感想~

 劉氏の一件では媚娘の策は失敗、長孫無忌に軍配が上がり、そして李忠はただ者ではないということが判明した回となりました。

 

 宮廷は権謀術数の世界ですが、子供も生き残るため頭を働かせているんですねー。

劉氏が語っていたように皇子で寿命を全うできたのがどれくらいいるのかという世界ですから母親を失い、後ろ盾になってくれる皇后がいなくなったら自分の身がどうなるか考えたかもしれません。

母親は、恵まれない環境でも李忠と一緒に暮らせたらそれで満足という人で、李忠も同じ価値観だと思っていたのですが、これまでの皇子達同様しっかり野望を抱いてました。

 瑞安が李忠の事を「実母を裏切るのは同情に値しません」と評してましたがその通りで、あれほど嫌っていた皇后に媚び出したり計算高く抜け目のない子だということがわかりましたね。

これは媚娘にとって大きな誤算となりました。

 

 劉氏が亡くなった現場に長孫無忌が現れ、媚娘の計画が狂ってしまうシーンのやり取りは見応えたありました。

 何か裏があるとにらむ長孫無忌は、媚娘の影を感じ取っていただろうし、一方媚娘も長孫無忌がすぐ現場にやって来て皇后犯人説の不自然さを指摘し、また劉氏の最近の様子をしっかり把握していたりとやはり一筋縄ではいかない相手だと再認識したと思います。

 媚娘と長孫無忌、直接やり合うわけでないけど二人の間にある緊張感を楽しめました。

 

 素敵だったのは媚娘と呉王の舞のシーンです。

一人で舞う呉王の姿は力強くて格好いい。

そして呉王と媚娘がともに舞うシーンはとにかくファンビンビンさんが妖艶でそら先帝も雉奴も寵愛する訳だわと思いました。

呉王が媚娘の手を握る所、最後のポーズで呉王の顔が近づいて動揺する媚娘の表情がいいです。

見てるこちらもドキドキします。

 

この二人の姿と会話を聞いて耐えられなくなった雉奴は立ち去るのですが

立ち去った後に宮中を離れない理由を語ります。

「雉奴がいます。

 この世で唯一の親族なのです」

ここをちゃんと聞いてくれていたらよかったのに。 

 

 雉奴は呉王を追放することを決めます。

ずっと理不尽枠の呉王が李勣と手を組もうと画策するのかどうなのかという流れでしたが、「それは本当に身を守る策なのか、呉王ー!」と心の中で叫びつつ実直な呉王のこれからが心配な私でした。