武則天 #55 腹心の奏上

  高陽公主は朝廷を牛耳っているのは長孫無忌でありそうである以上媚娘との未来も望めないと語り掛ける。

そして呉王を長安に戻すよう勧める。

 

高陽公主は雉奴に大朝会の花火を見たことが忘れられないと媚娘が言っていた話を持ち出す。

雉奴は自分が見せてやると答えたが、高陽公主は媚奴が感業寺を離れるつもりで皇宮にはもう戻らない、花火も見られぬかもと言い残し去って行った。

 

 王皇后にも賢霊宮へいこうとしていた雉奴が甘露殿へ戻り高陽公主と会ったことが報告されていた。

 

 雉奴は李世民の遺詔を読んでいる。

そこには

「女帝武氏が国を亡ぼすとは妄言とはいえ放任はできぬ

 朕の死後媚娘が子を宿したなら

 この男女を問わず 皆排除せよ

 媚娘の命だけは奪ってはならぬ」

と書かれていた。

こんな無情な父親と見た花火が忘れられないのかと怒る雉奴。

 

 雉奴は王徳に文を呉王のもとへ届け許敬宗を呼ぶよう言いつけた。

許敬宗に羽林軍の副統領に呉王を据える案を奏上するよう命じる雉奴。

 

 雉奴から長安へ戻し重任を託すという文が届いたが浮かぬ顔になる呉王。

呉王は最近刺客を率い太極宮へ行き雉奴を殺す夢を見ると言い長安に戻るとそれが現実になりそうで恐ろしいと楊青玄に打ち明ける。

楊青玄は雉奴のために長安へ戻るよう勧め、呉王もすぐ戻ると応じた。

その二人の側にいた従者が密かに文をしたためている。

 「呉王は不忠の臣にあらず

  楊青玄はいまだ謀反を画策しているゆえ

  謀殺を‥」

 

 警戒しながら市中を歩く楊青玄。

訪れた場所には隋の遺民である兵士たちが訓練している。

楊青玄は彼らと共に文徳皇后の命日に雉奴を殺す計画を立てていた。

 

 朝議で許敬宗が羽林軍の副統領の後任に呉王を据えることを奏上するが老臣達に押され気味になっていた。

そこへ許敬宗を弾劾する奏上がなされ許敬宗が弾劾の内容を認めたことで左遷されることになった。

結局呉王を長安に戻すことは叶わぬことになる。

 

 大朝会の花火が上がっている。

雉奴の心遣いだとわかる媚娘。

雉奴の子だとわかれば帝位が脅かされ災いが及んでしまうとしそれを隠し通しお腹の子と長安を離れる決心をする。

 

一方雉奴は自分が媚娘とお腹の子を守るべく媚娘を長安に留め自分の側に置くことを決心していた。

 

 素節の振る舞いで恥をかかされた王皇后は怒りが収まらない。

その仕返しに侍女は媚娘を利用することを思いつき王皇后に話す。

そして媚娘に会えるのは文徳皇后の命日に感業寺に行く日だと気づく。

 

 長孫無忌は呉王を捕らえ文徳皇后への供物にすると長孫沖に語る。

 

 媚娘は地図を眺め逃げるルートを考えていた。

 

 文徳皇后の命日の催しが感業寺で行われておる。

長孫無忌は長孫沖から監察御吏が呉王府に遣わされたことを聞く。

 

 呉王府に監察御吏らがなだれ込み呉王を捕らえようとするも姿はなく二日前に長安へ行ったという。

 

 感業寺にいる媚娘に会う為急ぐ王皇后。

だがそこに媚娘の姿はなかった。

媚娘は感業寺を出た。

雉奴は瑞安から媚娘が感業時を出たという報告を受ける。

 

 竹林を走り逃げる媚娘。

羽林軍の姿が見える。

そこへ駆けて来る馬が見え走って逃げる媚娘だったがつまずいてしまう。

手を差し伸べてきたのは雉奴だった。

子が産まれるまででもいいから皇宮へ戻るよう説得する雉奴。

そこへどこからか矢が放たれ雉奴の肩に命中した。

雉奴は媚娘に逃げるように言うが媚娘は雉奴に刺さっている剣を取り出し

「見捨てないわ」と言って戦おうとする。

そこへ呉王たちが助けにやって来た。

 

~我的感想~

 最後の場面でかつて菊の花をくわえ美しく華々しく活躍していた頃を彷彿とさせる

「見捨てないわ」と言う凛々しい媚娘を久し振りに見ることができました。

 

 媚娘も雉奴も呉王もしんどいことを抱えていて重い展開なので本来の媚娘らしい姿を目にすることができ媚娘はこれでなくては!と心躍りました。

 

 李世民が雉奴に託していた遺詔の非情な内容が明らかに‥。

私情より国事、でも媚娘の命だけは助ける、最後の最後までブレなかった李世民

皇帝としては賢明な判断かもしれないけど、この残酷な決断を下された側の立場を考えるとこれまでの愛情は崩れ去って憎んでしまいそうになるくらいの内容だと思いました。

 それほど時間をかけずに決断したのだろうか、もし我が子を腕に抱くことがあったとしても同じ決断を下したのかなと考え込んでしまう位の悲しい内容でした。

 

 知らないとはいえそんな非情な李世民を愛し続けている媚娘にやり切れなさを感じながらも遺詔に背いてお腹の子と媚娘を守る決意をする雉奴が健気でいじらしくて切なくなります。

 媚娘は多分それでも李世民を慕い続けそうな気がするので余計そう思えてきます。

 

 長安に戻って来るよう雉奴から文が届いた呉王は複雑な心境に。

 仮に雉奴を亡き者にしたとしても呉王自身が皇帝になることの正当性は母親のことを考えると低いし雉奴よりもっと基盤が弱いので道は険しいものになるだけだけど、一地方を任される一生若しくは長安で弟を補佐する立場で終わりたくない気持ちが心の奥底に残っているのかな。

 呉王の知らぬところで楊青玄が雉奴殺害計画を立て手下まで手配済みという驚きの展開が!

 あの淑妃様のことなので自分が死んだ後も隋復活の夢を楊青玄に託したのではと勘繰っております。

 

 雉奴は朝議で許敬宗を使って呉王を長安に戻せるよう画策するも長孫無忌&老臣たちに潰されてしまいました。

 雉奴が考えそうなことは見透かされてばかりで相変わらず心許ないですね。

雉奴にとって媚娘が必要とされる理由がここにも‥。